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2004.08.31

人生処方箋!

昨日『現代詩手帖』を買った。
今月号の特集は「人生処方箋」。
予告で知ってはいたものの
この余りに「現代詩」らしくない響きに
やっぱりのけぞってしまう。
先月号の特集は伊良子清白だったし
最近『手帖』は少しキレてる……?

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2004.08.29

ギリシャ的抒情詩

オリンピックももうすぐおしまいですね.
感動シーンの数々,十分に堪能できましたか?
実は私は火曜日から3日間,風邪で寝込んでしまい
後半の見所を幾つも見逃してしまいました.
そのかわりに寝床で拾い読みしたのが
西脇順三郎の詩集『Ambarvalia』.
中でも「ギリシャ的抒情詩」と題された作品群です.

    天気

  (覆された宝石)のような朝
  何人か戸口にて誰かとささやく
  それは神の生誕の日

その筆頭に据えられたのが「天気」.
街中をきらめかせる強い日差しと澄んだ空気.
冒頭のたった一行でギリシャ的風景がたち上がる.
そして,そこでしかありえない神話的なできごと.
でも,いま読むと,まるでアテネ五輪の詩のように思えます.

私が,この詩と出会ったのは高校生の頃
頭をふっ飛ばされたような想いがしたものです.
(それっきり頭が帰ってきていないような…….)
久しぶりに本棚から取り出して黄ばんだ表紙を見ると
新潮文庫版の『西脇順三郎詩集』.
編・解説は,あの『体操詩集』村野四郎でした.

ちなみに『西脇順三郎詩集』(新潮文庫)は今でもここで買えます.

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2004.08.28

ただの私

ふたたび『体操詩集』から.

   競走

  あなたは不思議だ
  あなたの胸のナンバーは
  すばやく空間を行きすぎた
  おお一枚の白い速力だつた

  だが いまあなたは
  笑つて僕と握手をする
  あなたはもう速力がなく
  言葉は吃(ども)り
  思想のタオルを肩から垂らしてゐる

走り終えたアスリートがただの人に戻った瞬間
競い争う,という「思想」が,束の間,だらりと弛緩する.
どんな競技者にも,ただの私,が隠れ棲んでいて
しかったり,脅したり,なだめたり,すかしたり
競技者は,ただの私,と折り合いをつけながら闘っている.

マラソンの女王ラドクリフの転落.
過酷な闘いのさなか,36キロを走り続けた時点で
その折り合いがつかなくなってしまったのか…….

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2004.08.24

ハンマー投げ

アマゾンで買った『体操詩集』を読んでいる.
さすがは愛蔵版だ.
初刊を模したという装丁が実に実にシブい.

     鉄鎚投

  御覧
  鉄が描く世界の中で
  しばらく哀れな電動機(ダイナモ)が喘い
  てゐる

  白い円の中に据ゑられて

これが例のハンマー投げの詩だ.
アスリートが満身の力を使い果たした瞬間を
村野の冷徹な視線が鋭く切り取っている.
見開きに組み合わされた外国人選手の写真.
満面の笑みは「哀れな電動機」に変わる寸前の姿か?
諧謔に富んだ紙面は北園克衛のデザインによる.
昭和14年,あの戦争のさなかに
2人が発揮したモダニストぶりが眩しい.
同時に切なく痛ましくもある.

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2004.08.23

オリンピック,思わぬ波及効果

オリンピック!
日々繰りひろげられる熱戦と日本のメダルラッシュ.
おかげですっかり寝不足だ.

で,室伏のハンマー投げを見ていたら,ふと思い出した.
そうだ,村野四郎の『体操詩集』にハンマー投げの詩があったな…….
そう思うと無性に読み返したくなってアマゾンで買ってしまった.

 村野四郎.体操詩集.愛蔵版詩集シリーズ.日本図書センター.2004

今夜,家に帰ったら届いているはず.
早く読みたいなぁ…….
って,そんなん読んでたら,女子レスリングが見られない.
う~む.

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2004.08.07

現代詩の前線

『現代詩手帖』7月号を読み終えたところです.
7月号の特集は「現代詩の前線」.
大体,毎年,7月号か8月号は夏の作品特集で
ここ数年は,その標題も必ず「現代詩の前線」となっています.
今年は,大御所の飯島耕一と吉増剛造の長編詩
若手から中堅どころの詩人20名の最新作
加えて藤井貞和・瀬尾育生・横木徳久による討論と
非常に読み応えのある1冊に仕上っていました.
中でも印象深かったのは次の作品です.

池井昌樹「バス」(「終点から」より)

 いまはのりたいバスもない
 いまはゆきたいまちもない
 いまは終点なのかなあ

人は老いはじめる頃そんな感慨を持つのだろうなぁ
と素直に思わされてしまう.
こちらも老いと衰えの予感を持ち始めているせいなのか
それとも池井の巧みな語り口によるものか
おそらくは両者があいまってということなのだろうけれども
池井の作品は,それだけでは終わりません.
日常的な抒情が幻想へと転じていく
その幻想の強度と,滑らかで自然な言葉運びこそ池井の真骨頂です.

■ 飯島耕一「アメリカ」

飯島の世代はアメリカに対して強い憎悪と憧憬とを持った世代なのでしょう.
そのアンビバレントな感情は私にも判らなくはないけれど
質的にも強度も随分,差がありそうです.

 やっと近代の滅亡にフルエテいる 肥り過ぎた腔腸動物 寒天質の海に漂う
  腐敗物質
 アメリカ

しかし飯島はアメリカへの憧憬はついえ去ったという.
それはアメリカが「ますますおちぶれた」からであり
「行っても行ってもアメリカには辿り着けない夢」が醒めてしまったからだと.

穂村弘「手品の日」

恋人の父親に結婚の許しを得に行く日のできごと.
高まる緊張感――私も経験あります(汗)――
しかし何故か徐々に徐々に現実からずれて行ってしまう.

 私はメロンに近づき、値札をみて驚く
 ¥七二五0000
 高い!

それでも,ようやく恋人の家に辿りついたが
彼女の父親は次々と手品を繰り出し「私」を翻弄する.
「私」も負けじと恋人を消す手品に挑むが…….

 慌てて布を払いのけると
 未来の花嫁は宙に浮かんでいる
 微笑みながら
 うっとりと目を瞑って
 ふわふわ

■ 松本秀文「馬・紙飛行機(うまれてはみたけれど)」

特集の掲載作ではなく新人投稿欄の作品ですが,これは面白い.
発想もよいし,技術面も悪くない,そして何より勢いがある.
更なる活躍が楽しみです.

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詩の作り方

黒田三郎の『詩の作り方』を読んだ.
5月頃から読み始めたのだが何故か途中で読み進めることができなり
今月に入って,ようやく読み継ぐことができるようになった.

 何度でも
 打ち上げよう
 美しい
 願いごとのように

詩集『もっと高く』に収録された「紙風船」の一節.
黒田というと,この詩句を思い浮かべる人も多いだろう.
フォークグループの赤い鳥が歌っていたからだ.
このような詩を書く黒田にとって詩を書くとはどういうことか.
俺はそれが知りたかった.知る必要があると思った.

 ここにひとつの「渇いた心」があると告白するほかに、
 言うべき言葉を知らぬ

『詩の作り方』に引用されていた黒田自身の言葉.
詩集『渇いた心』のあとがきに記されたものだ.
詩集に収められた作品が詩と呼べるかどうか
自らの問いかけに対する答えが「渇いた心」だという.

自分の心の渇きに目を向けること.
詩を作るには,先ず,ここから始めるほかないのかもしれない.

ちなみに『詩の作り方』はこちらから購入できます.
現代詩文庫の『黒田三郎詩集』もいかがでしょう?

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2004.08.05

さとうきび畑の唄

テレビドラマ『さとうきび畑の唄』を観た.
昨年9月の放映時にも観たから2度目である.
2度目であるが少しも飽きさせない.
ラストまで,ぐいぐいと引っ張る力がある.
2度目であるが,やっぱり涙が出た.感動した.

2度目であるが,あれから1年近く経ったが
イラクでは依然として破壊と殺戮が続いている.
俺は,その開戦を止められなかった自分を悔やみきれない.
俺は戦争を見せるために子供を育ててきたのではないのに.

ちなみにDVD『さとうきび畑の唄』はこちらで購入できます.

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2004.08.03

八月が転がっている

今朝のことである.

通勤途上の池袋駅.
数メートル前を行く女の足元から何やら得体の知れないものが転がりだした.
女は一瞥をくれただけで何ごともなかったかのように去っていった.
あれはいったい何だったのだろう.
通りすぎざまに目をやると仰向けに転がった蝉の死骸.

八月.
まだ夏の盛りではあるが,そこには既に終焉も孕まれている.

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