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2004.08.07

現代詩の前線

『現代詩手帖』7月号を読み終えたところです.
7月号の特集は「現代詩の前線」.
大体,毎年,7月号か8月号は夏の作品特集で
ここ数年は,その標題も必ず「現代詩の前線」となっています.
今年は,大御所の飯島耕一と吉増剛造の長編詩
若手から中堅どころの詩人20名の最新作
加えて藤井貞和・瀬尾育生・横木徳久による討論と
非常に読み応えのある1冊に仕上っていました.
中でも印象深かったのは次の作品です.

池井昌樹「バス」(「終点から」より)

 いまはのりたいバスもない
 いまはゆきたいまちもない
 いまは終点なのかなあ

人は老いはじめる頃そんな感慨を持つのだろうなぁ
と素直に思わされてしまう.
こちらも老いと衰えの予感を持ち始めているせいなのか
それとも池井の巧みな語り口によるものか
おそらくは両者があいまってということなのだろうけれども
池井の作品は,それだけでは終わりません.
日常的な抒情が幻想へと転じていく
その幻想の強度と,滑らかで自然な言葉運びこそ池井の真骨頂です.

■ 飯島耕一「アメリカ」

飯島の世代はアメリカに対して強い憎悪と憧憬とを持った世代なのでしょう.
そのアンビバレントな感情は私にも判らなくはないけれど
質的にも強度も随分,差がありそうです.

 やっと近代の滅亡にフルエテいる 肥り過ぎた腔腸動物 寒天質の海に漂う
  腐敗物質
 アメリカ

しかし飯島はアメリカへの憧憬はついえ去ったという.
それはアメリカが「ますますおちぶれた」からであり
「行っても行ってもアメリカには辿り着けない夢」が醒めてしまったからだと.

穂村弘「手品の日」

恋人の父親に結婚の許しを得に行く日のできごと.
高まる緊張感――私も経験あります(汗)――
しかし何故か徐々に徐々に現実からずれて行ってしまう.

 私はメロンに近づき、値札をみて驚く
 ¥七二五0000
 高い!

それでも,ようやく恋人の家に辿りついたが
彼女の父親は次々と手品を繰り出し「私」を翻弄する.
「私」も負けじと恋人を消す手品に挑むが…….

 慌てて布を払いのけると
 未来の花嫁は宙に浮かんでいる
 微笑みながら
 うっとりと目を瞑って
 ふわふわ

■ 松本秀文「馬・紙飛行機(うまれてはみたけれど)」

特集の掲載作ではなく新人投稿欄の作品ですが,これは面白い.
発想もよいし,技術面も悪くない,そして何より勢いがある.
更なる活躍が楽しみです.

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