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2004.08.28

ただの私

ふたたび『体操詩集』から.

   競走

  あなたは不思議だ
  あなたの胸のナンバーは
  すばやく空間を行きすぎた
  おお一枚の白い速力だつた

  だが いまあなたは
  笑つて僕と握手をする
  あなたはもう速力がなく
  言葉は吃(ども)り
  思想のタオルを肩から垂らしてゐる

走り終えたアスリートがただの人に戻った瞬間
競い争う,という「思想」が,束の間,だらりと弛緩する.
どんな競技者にも,ただの私,が隠れ棲んでいて
しかったり,脅したり,なだめたり,すかしたり
競技者は,ただの私,と折り合いをつけながら闘っている.

マラソンの女王ラドクリフの転落.
過酷な闘いのさなか,36キロを走り続けた時点で
その折り合いがつかなくなってしまったのか…….

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