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2004.09.23

一千一秒物語

稲垣足穂の『一千一秒物語』(新潮文庫)を読んでいる.

この本には元祖ショートショート(?)集「一千一秒物語」の他にも:
  黄漠奇聞
  チョコレット
  天体嗜好症
  星を売る店
  弥勒
  彼等
  美のはかなさ
  A感覚とV感覚
といった短編,エッセイが収録されており,いまちょうど「星を売る店」を読み終えたところだ.

ここまでで感心したのは「黄漠奇聞」である.まず,その冒頭部分,あっという間に物語の世界を構築し読者を誘い込む.

赤い太陽が砂から昇って、砂の中へ赤く沈む。風が砂の小山を造って、またそれを平らかにしてすぎ去る。来る日来る日の風は世界の果てから運んできた多くのことをささやくが、それは人間には判らぬ言葉である。

「黄漠奇聞」はこのような砂漠を背景に語られるファンタジーだ.「一千一秒物語」や「チョコレット」等も同様にファンタジーであるが,大正モダンな色彩の濃い道具立てをひけらかし,その華やかさを頼りにしているように感じられるところがある.一方,「黄漠奇聞」は抑制が効いた文章で嫌味がなく,それでいてきらびやかな艶がある.

『一千一秒物語』は作品が発表順に並べられている.「星を売る店」までの前半部分は大正時代,20代前半に書かれた作品だ.足穂はその後アルコール中毒による10余年に及ぶ断筆状態を経験している.「弥勒」以降の4編は戦後,創作を再開した40代から50代に書かれたものだ.独特の感性と才気を誇った足穂がどのように成熟してゆくのか,後半を読み進めるのが楽しみである.

ちなみに『一千一秒物語』はこちらで購入できます.便利で安全,アマゾンです.

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