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2005.01.03

2004年を振りかえる(詩作篇)

続いては詩作篇。昨年は敢えて詩作を控え詩を読み詩を学ぶことを優先した。その成果の一端はこのブログにも紹介してきたが、本当の成果は今年以降の創作活動で示さなくてはならないと考えている。

言い訳はさておき昨年一年間に書いた詩は僅か二編のみ。しかも、いずれも習作の域を超えないと自覚している。とはいえ習作には習作なりの、あるいは習作ならではの面白さもないわけではなかろう。歳の始めの福笑い代わりにして頂ければ望外の幸いである。


    速度

 その女はいつの間にか現れて、いつも私の前を足早に歩いてゆく。私はその速度に魅せられる。彼女を追わずにはいられないのだ。
 しかし追跡は十五分も続けばましなほうだ。信号機や人混みが邪魔をする。女の汗の匂いにさえ追いつくことはできない。
 その日も私は女を見失った。諦めて地下鉄に乗りこむ。ガラス窓に思い浮かぶ女の後姿。その向う側にコンクリートの壁が続く。
 モーターの唸り。レールの継ぎ目を踏む車輪の音。くぐもった響きの隙間から聞きなれた女の足音が軽やかに降り始める。
 鉄路の西の果て、見なれた工業団地に降り立つ。足音は未だやまない。信号を渡っても、工場の門をくぐっても、足音はついてくる。それとも私が追っているのか。
 薄暗い事務棟の廊下に速さが充満してゆく。女と私は際限のない追跡を無言で共謀する。そして逃走する。やまない雨の中へ。


    同盟

 寒い夜のことだ。

 男はコートのポケットの中でこぶしを握りガッツポーズを作った。小さく、しかし強く。自分だけの、ささやかな勝利を確認しているかのようだった。手のひらに四つの爪跡ができた。うっすらと血がにじんでいた。

 見上げると薄赤い三日月が冷えきった夜空に浮かんでいる。五つ目の爪跡のように。

 男は満足げに歩き出した.ひと気のない夜道を。

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