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2005.01.15

辻井喬「天使が消えた」――『現代詩手帖』1月号から

早いもので1月ももう半ば、さすがにお屠蘇気分も抜け、いつもと変わらぬ暮らしが戻ってきた。そこで遅まきながら『現代詩手帖』読みの仕事始め、1月号からの抜書きを紹介しよう。

1月号は「現代日本詩集2005」と題し、例年通り作品特集号となっている。ベテランから中堅まで日本を代表する40人余りの詩人の新作を一通り読むことができるのだ。その中で先ず眼を引いたのが辻井喬の「天使が消えた」。

もう僕の天使の姿はどこにもない
いよいよ来るべきものが近付いたからなのか
それは大地震でも革命でもないはずだが
それではどんな と聞かれれば答えられない
はっきりしているのはこれからも不安が続き
天使のなかにもいろんな天使がいて
しかし誰も僕の味方ではなかったということだ

「ざんざか」という印象的なオノマトペを伴って繰返し降る雨が歳月を流しさってゆく。どこかバブル期の「おいしい生活」を思わせる若い女たちの華やいだ宴も遥かな過去の思い出となり果てた。そして、いま、眼の前に広がるのは終末の予兆を感じさせる「暗い空」。

辻井は実世界ではいつも「暗い空」を仰ぎながら何かを変えようともがいてきたのだろう。若い時分には社会主義革命に、長じては流通ビジネスと消費文化に、変化の駆動力を求め、結局は果たせなかったのだと思われる。晩年をむかえ、いよいよ暗みを増した空を仰ぐとき、もはや希望を賭すべき何ものもなく、いや本当は、そもそも何もなかったのだと気づく。

声高に叫ばれる空疎な夢や理想よりも、辻井の冷徹な現実認識と淡々とした語り口のほうが却って心に落着きをもたらす。それは僕らもまた「暗い空」の下を黙々と歩んでいるからなのだろうか。

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