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2005.02.06

池井昌樹「だれもしらない」――現代詩手帖1月号から(4)

『現代詩手帖』1月号からの書抜きは更に続く。今回は池井昌樹の「だれもしらない」。七五のリズムとひらがなを基調とした6作品(「ひとり」、「夕顔」、「だれ」、「だれもしらない」、「くらし」、「おまつり」、「ごはん」)からなる連作。どれをとっても、人間というのは切なく淋しい生きものなんだなぁ、と嘆息させられる。

だれなのかしらあのひとは
あんなにかなしいおそろしい
あんなにつかれたかおをして
わたしをじっとみるひとの
そのめがあんまりかなしくて
あんまりあんまりさびしくて
まばたきひとつできません
なきだすこともできません
ひとさしゆびをくちにいれ
おもちゃもごはんもそっちのけ
ちいさなちいさなこがひとり
わたしをじっとみています
だれなのかしらあのひとは(「だれ」全文)

池井の言葉は淀みなく滑らかに流れ心地よい。だが油断は禁物。池井は、すっと主客を入れ替えてしまう。その上で、最後は1行目と同じ詩句を持ってくる。あたかも言葉を円環に閉じこめたかのようだ。こういった手口の鮮やかさ、技術の確かさこそが、実は池井の抒情の名手たる所以である。

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