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2005.09.15

戦後60年目に読む草野心平

そして思つた。
空気よ思ひつきり広がれと。
虻たちよ。
唸れと。
草野心平「サッコ・ヴァンゼッチの手紙抄」より最終連)

『現代詩手帖』8月号を読んでいる。もうとうに9月号が発売されているというのに。まぁ、しかたがない、人にはそれぞれ何かと事情というものがあるもんだ。

さて8月号の特集は「戦後60年<現代詩>再考」。飯島耕一、長谷川龍生から野村喜和夫、城戸朱理まで、戦後の各世代を代表する詩人10人による座談会「歴史のなかの現在形―戦後60年の水脈」と、彼らが10篇づつ選んで編まれたアンソロジー「戦後60年名詩選95篇」からなるものだ。

ボクはこのアンソロジーで出会った草野心平の作品「サッコ・ヴァンゼッチの手紙抄」に(虻ではないが)唸らされた。サッコとヴァンゼッチは米国史上最大級の誤審事件の被害者。貧しい無政府主義者であったことから強盗殺人の濡れ衣を着せられ、世界中に湧き起こった救援の声にも拘らず、1927年、ついに死刑に処せれた。草野は若い頃、モツ焼きの屋台を引きながら、この二人の手紙を翻訳出版したという。50年後、ようやく二人の恩赦、名誉回復が果たされたとの新聞記事を読んだ草野は胸のうちで叫んだ。「空気よ思ひつきり広がれと。/虻たちよ。/唸れと。」――この叫びからは草野の万感の想いが伝わってくる。凄い詩だ。

戦後60年という枠組みの中で草野の作品を選ぶことはとても難しいことのようにボクには思われる。「サッコ・ヴァンゼッチの手紙抄」は非常に優れた作品であると同時に、日本の現代詩が60年前にはどのように書かれていたのか、そして今はそれがどのように変わってしまったのかを如実に示している。そのような作品をさらりと選んだ読み手としての荒川洋治にもすさまじい凄みを感じた。

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