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2007.08.15

いのちの色

7月25日。庭の草取りをしていたときのことだ。ふと顔を上げると1メートルほど先にハチが飛んでいることに気づいた。あちこち飛び回るわけではなく、ひとところに浮遊している。気のせいかこちらを警戒しているようにも見える。もしやと思い、ハチが浮かんでいる、その下の辺りを見てみると、案の定、伏せてあった大きなバケツのふちにトックリを逆さにしたような形の巣がはりついている。直径5センチほどあろうか、けっこう大きな巣だ。このまま放置しておいては家族が刺されたりして危ないのではないか、ボクは意を決して巣を撤去することにした。

幸運なことに手元には蚊取り線香がある。攻撃してこないか様子を伺いながら静かにハチに近づく。警告を発しているような黄色と黒の体色、見るからに獰猛そうな顔立ち。おじけづく気持ちを抑え線香をハチの下に置く。立ち上る白い煙にしばらくは耐えるように旋回していたが、さすがに蚊取り線香にはかなわなかったのだろう、ハチはとうとうどこかに飛び去ってしまった。戻ってこないうちにとボクは手元にあった園芸用のシャベルの先で巣を剥がし取り、地面に落ちた巣を突き崩した。すると中から鮮やかな緑色のアオムシが5~6匹あらわれた。まだ生きて動いている。その下には、ハチの卵であろうか、ほのかに黄色く、ねっとりとした感じの丸いものが隠されていた。ボクは見てはいけないものを見てしまったような心持ちがして、慌ててレジ袋に巣とアオムシと卵とをすくい取り、むしり取ったままにしておいた雑草で覆った。そしてレジ袋の口を固く結んだ。

そのまま草取りを続けているとハチが帰ってきた。蚊取り線香を頼りに身を潜めて観察していると、ハチは巣のあった辺りをしばらくは去り難そうに漂っていたが、とうとう諦めたのか、ひときわ高く空へと飛び去った。そんなハチの姿を見ているうちに虫たちの命を奪ってしまったことを悔やむ気持ちが湧き上がってきた。ハチの卵を殺し、その卵を育むはずだったアオムシの生命を無為に奪い、生命の連鎖を次代に繋ごうとしたハチの営みを無に帰してしまった。そのようなことをする権利、資格がボクのどこにあるというのか。その必要性すらなかったのではないか。目を閉じると黄と黒のハチの体色やアオムシの鮮やかな緑、生々しい卵の薄黄色が思い出される。それだけではない。雑草の葉と茎、根と土の色、ハチが飛び立っていった空の青、強烈な太陽の光……激しく押し寄せてくる濃密な「いのちの色」に取り囲まれて、ボクはただひとり、おろおろとうろたえるばかりだった。

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