« 初月忌 | トップページ | 薬王院へ行く »

2008.05.15

矮猫亭・2001年7~9月

古い日記の再掲載。今回は2001年7~9月です。この頃も相変わらず仕事の本ばかり読んでいたんですねぇ。それでも多少は詩を書く気もあった様子。それに引きかえ近頃の自分ときたら……。やはり、忙しい、を口実にしてはいけませんな。

ところで、この夏、初めて富士山に登った息子は翌々年、二度目の登頂を果たしましたが、その後はすっかりインドア少年になってしまいました。分からないものですねぇ。


あぁ また買ってしまいました 2001/07/03

コルグのマルチ・エフェクターPANDRA PX3Tを買ってしまいました。つい4ヶ月前にZoomの505Ⅱを買ったばかりなのに。リズムマシン機能(ドラム+ベース!)、FMトランスミッター機能までついて、しかも、とっても小さい。物欲を掻き立てられてしまいました。

で、早速、使ってみましたが、機能満載の上、操作性もgood。音も悪くありません。うぅむ、Zoomとうまく使い分けられるかしら……。


今度は情熱本だぁ 2001/07/04 09:06

リチャード・チャン.斎藤彰悟監訳.酒井泰介訳.パッション・カンパニー.春秋社.2001(Chang R.The Passion Plan at Work.2001)

色んな意味で勉強になる1冊でした。1つは勿論、情熱も大事よね、ということ。古臭い体質の小生の勤務先にもようやくモダンな経営学が根をおろしつつある昨今、それはそれでよいことなのでしょうが、妙にクールな時にシニカルな雰囲気が漂うようになってきた気がします。小生自身もその影響を被るところ大であって、熱気みたいなものを忘れていたのではないか。ちょいと反省させられました。

もう1つはコンセプトというかキーワードの力。本書に書かれていることは、経営ビジョンに関する諸々の本と大きな違いはありません。ただ、そこに、「情熱」というコンセプト、キーワードを持ち込むことで、幾多の経営学者の書いたクールな本からは感じられないビビッドな感覚が生まれています。理屈では判っていたビジョンの果たす役割を実感できたという感じです。

うがった見方をすれば、この著者、大したタマだ。経営学に「情熱」というコンセプトを持ち込んだだけで、本が1冊書けてしまった。それどころか「情熱」コンセプトでコンサルもやっているらしい。でもイノベーションってもんは、とどのつまりはそういうものなのかもしれませんね。というのも勉強になったことの1つであります。


浸透策も考えないとね 2001/07/05

野林晴彦;浅川和宏.理念浸透「5つの策」.慶應経営論集.第18巻第1号.2001年2月

どんないいビジョンができても、社内に浸透しなくちゃ意味がない。という訳で浸透策に関する論文も読んでみました。

浸透とひとことで言っても色んな側面がある。例えば製品が経営理念に沿ったものだからといって、人事制度もそうなっているとは限らない。当論文は、そうした浸透の「多義性」を実証的に明らかにしています。また浸透の各側面毎に有効な浸透策が違うとしています。20業種63社の経営理念担当者へのアンケート調査を実施。なかなか高度な統計手法を用いており、洗練された研究ではありますが、浸透の各側面毎に有効な浸透策が違うと言い切るには分析が甘いように思われます。

当論文は、経営理念が「人事制度」に体現しているかと、浸透策として「インナープロモーション」(理念をテーマとした交流会やキャンペーンの実施等)を実施しているかとの間に相関があることから、後者が前者に対して有効としています。しかし、何故、後者が前者に対して有効かの分析は行われていません。単に相関があるからといって因果関係があるとは限らず、むしろ何か別の因子が効いているような気がします。

常識で考えても、キャンペーンをしたら「人事制度」が変わるなんて思えませんよね。それにキャンペーンが「人事制度」にだけ効果的っていうのも不自然過ぎる。小生なら、キャンペーンを行うような会社は「人事制度」にも関心が強く、「人事制度」改革も進んでおり、その結果、相関が生じたと、解釈します。もし小生の解釈が正しいとすると、キャンペーンなんて浸透には効果がない、ということになりますが、その方が素直な気がしませんか?


ずばりミッション経営 2001/07/11

小野桂之介.ミッション経営に関する基礎的考察.慶應経営論集.第17巻第3号.2000年2月

経営ビジョン策定を含む経営計画のあり方見直し提案は、とうとうトップマネジメントの了承を得るに至りまして、お勉強にもますます熱が入ります。で、今度はタイトルもそのものズバリ。ざっと以下のような内容です。

企業がそのミッション=使命を果たすべき対象には顧客、従業員、株主、地域社会の4つがある。しかしこれら4者の利益は短期的にはトレードオフとなることから、このトレードオフを解決し、4者に対する使命を同時に追求できる道を探るのが経営者の役目。そして同時追求に成功している企業を見ると、いずれも顧客志向のミッションを基点としている。すなわち、従業員が顧客志向になれば、顧客に対して高い価値が提供でき、顧客志向の従業員は顧客が喜んでくれることでハッピーになる。また高い価値を得た顧客はそれに見合った対価を支払うので企業の業績が上がり、株主価値が向上する。一方、企業は好業績を背景に社会貢献活動を行い、その結果、社会的評価が高まり、顧客や株主の信頼、従業員の働きがいが増す。

小生が経営ビジョンのミッションの部分について考えていた枠組みもほぼ同様なものです。但し、じゃぁ、顧客にどのような価値を提供するのか、その価値の源泉は会社のどこにあるのか、といったところまで、踏み込んでみたい考えでおります。


とはいえ戦略論ふたたび 2001/07/12

でもやっぱり戦略論は面白いんですよねぇ。てな訳で「ミッション経営」に続いて慶應経営論集より2本。いずれもなかなか良いです。
小林喜一郎.戦略論をみる8つの視座.慶應経営論集.第15巻第1号.1998年3月

従来の戦略論を8つに類型化し、それぞれの特徴、功罪を整理。その上で経営資源論的アプローチを核として、他のアプローチを統合してゆくべきと論じています。戦略論にもこんなに色んなアプローチの仕方があったのかぁ、と素朴に驚きました。
磯辺剛彦.競争のタイプと経営戦略.慶應経営論集.第14巻第2号.1997年3月

戦略論の3つの主要アプローチ、産業組織論、資源論、動態的能力論のそれぞれがどのような競争観を前提としてきたかを明らかにし、その上で、競争を企業間の「相互作用」として捉えることを提唱しています。また「相互作用」として競争を捉えるアプローチの代表としてゲーム理論を紹介。その限界についても明らかにしています。


大胆なビジョンには大胆な浸透策! 2001/07/12

ジム・コリンズ.ビジョナリー・カンパニーの行動哲学.ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス.2000年1月号

先月ご紹介したBuilding your Company's Visionの共著者の1人コリンズの論文です。壮大なビジョンを社員に浸透させるには「触媒メカニズム」が必要だとしています。例えば砂利、コンクリート、アスファルト等を売るグラナイト・ロック社は世界最高水準の顧客満足をビジョンに掲げ、その実現のために「ショート・ペイ」システムを導入。これがなんと顧客が代金を決められるという代物。請求書の明細のうち満足できなかった項目については、理由を書いて返送すれば、その分の代金は支払いの必要なしというシステムなのだそうです。これで採算が取れるのかと疑ってしまいますが、結果は、社員の顧客満足向上の取組みが進み、市場シェアも利益率もぐーっと改善。

で、コリンズの言う「触媒メカニズム」とは以下のような特徴を持つものなのだそうです:

  • 期待通りの成果を思いがけないやり方で生み出す

  • 権力を分配する

  • 厳しい強制力

  • 組織内の「ウィルス」を追放

  • 効果が持続的

しかしなぁ、保守的なわが社ではどんな「触媒メカニズム」が作れるのかなぁ。


真打登場! 2001/08/03

ジェームズ・C・コリンズ,ジェリー・I・ポラス.山岡洋一訳.ビジョナリー・カンパニー:時代を超える生存の法則.日経BP出版センター.1995(1994)

いよいよ真打登場です。コリンズの著作はこれまでにも2論文をご紹介致しましたが、これこそ同氏の中核的な仕事です。その後の他の著作は、ここを起点に産まれた派生物と言っても過言ではないと思います。

さてさて「ビジョナリー・カンパニー」とは何でしょうか。その定義を第1章から引いてみます。

ビジョンを持っている企業、未来志向の企業、先見的な企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与えつづけてきた企業

著者はビジョナリー・カンパニー18社とそれぞれの比較対象企業18社との創業以来の歴史を詳細に調査した結果、ビジョナリー・カンパニーには以下の特徴があるとしています。
  • 「時計をつくる」志向――指導者の個人的なカリスマ性に依存せず、組織作り、仕組み作りに注力する

  • 「ANDの才能」――現実か理想かではなく現実的理想を追う

  • 「基本理念を維持し、進歩を促す」

  • 「一貫性」――基本理念と進歩への意欲を組織のすみずみ(目標・戦略・方針・文化・経営陣の言動・オフィス配置・報酬体系・会計システム・職務計画等々)にまで浸透させる

また基本理念を維持し、進歩を促すための仕組みとして以下のような方策が取られているとしています。
基本理念の維持
  • カルトのような文化を築く

  • 基本理念に忠実な生え抜きを経営者にする

進歩を促す

  • 社運を賭けた大胆な目標(BHAG、Big hairy audatcious goals)を掲げる

  • 大量のものを試して、うまくいったものを残す

  • 決して満足しない組織をつくる――現状を不十分と感じさせる仕組み、短期的業績と将来への投資の両立

ビジョナリー・カンパニーを作り、維持してゆくためには、「一貫性」を維持することが重要なのだそうです。そのためには常に矛盾を発見し、つぶしていかなければならない。しかも進歩の芽を摘まないよう、変えてはいけないことをはっきりさせ、それ以外のものは常に変えていく、新しいことを試し続けることが必要となります。だからビジョナリー・カンパニーは決して終わることのない挑戦になります。

う~む。だとすれば、小生は終りのない仕事に取組み始めてしまったのでしょうか。ちょっとひるんでんでしまいそうですが、逆に言えば、今後の仕事は全てビジョンナリー・カンパニーへの挑戦に繋ぐことができるわけですから、とても大きな指針を得られたとも言えます。

ま、それはともかく早く目の前の仕事を終えないと夏休みがなくなるゾ~~~。


富士山初登頂 2001/08/07

久し振りに息子の登場です。わがやの一粒種、小学4年生の息子が富士登山に挑戦、無事、その頂きを踏みしめて帰ってきました。

息子は幼稚園生の頃、図画工作系の児童教室に通っていました。この教室の先生がアウトドア好きで、春から夏にかけてはバーベキュウやキャンプ、ハイキングといった野外イベントが目白押しです。息子が参加した富士登山の会も、教室恒例の年中行事で、今年は小学3年生から5年生までの教室OB5名と父兄2名が参加したそうです。

6日の朝、8時に懐かしい教室に集合。先生のワゴン車で富士に向かいます。昼頃、富士山五合目に到着。先生が用意してくれた握飯で簡単に腹拵えを済まし、いざ出発。初日は快調に進み、夕方には予定通り七合目の山小屋に着いたそうです。

ところが2日目は季節外れの悪天候。ガスが立ち込め、風が吹きすさび、気温も恐らく0度前後。午前4時半に山小屋を出てはみたものの、寒さに凍え、しゃがみこんだり、泣出す子供もいたそうです。先生が下山を決意した、まさに、その時、今まで陰っていた太陽がさっと姿を現わしました。体が暖まり、勇気づけられた子供たちが立ち上がる。先生はもう迷うことなく、「さあ、登ろう」と声を掛けたそうです。

その後も天候は回復せず、真っ白なガスの中を強風と戦いながら進んでいったのだそうです。しかし歩くうちに子供たちの体と心はすっかり暖まり、みんな元気に楽しく足を運びました。少々おしゃべりが過ぎる位だったそうです。ようやくガスが晴れると頂上はもう目の前。かくして富士登山は大成功に終わったのでした。

この2日間、小生は仕事をしながらも気になって気になって仕方なかったです。つれあいも同じだったらしく、「今頃、五合目かな」、「もう山頂かな」、などと、携帯でメールを交わしていました。

来年は、うち中そろって参加しようかなぁ。


ひさ~しぶりの創作メモ 2001/08/28

あんまり久し振りすぎて、忘れられちゃったかもしれませんが、2ヶ月ほど前に思いついたネタにちょこっとだけ進展がありましたので、ご報告します。
もしも私に愛が
許されるなら
それは五月
古い手紙から
解き放たれた風が子供たちを勇敢にする

「息子たちを勇敢にする」を「子供たちを......」に改めました。その方がイメージが広がるというか、自由に想像力を働かせることができると感じたからです。想像力の翼を十分に広げないと、個人的な体験や感傷に縛られてしまう。そうなると、いくら詩っぽい言葉を並べても、結局、説明や吐露に終わる。そう考えたのです。

私の創作は概ね個人的な体験を出発点としています。しかし個人的な体験を生(なま)のままぶつけることは殆どありません。むしろ、そこを原点にしながら、どこまで飛んでいけるかを試していると言えるかもしれません。だからと言って個人的体験にこだわりを持たないということではありません。むしろ強くこだわっているのです。こだわっているからこそ、そこから一旦、離れて、その体験の普遍的な意味を探りたいのです。

「息子たち」から「子供たち」へと変えたことにはもう1つの理由があります。この詩句では、個を越えて他者と一つになってしまおうとする、ある種の無謀さが、言わば愛の成立基盤としてとらえられています。もし初めの着想の通りに「息子たち」としてしまうと、そうした無謀さをふるうこと=勇敢さが、何の根拠もない伝統的な性役割分担と結びつけて理解されてしまうかもしれない。私はそんな誤解を恐れました。マイナーな理由ではありますが、私にとっては譲れない点でもあります。


さぁ、いよいよ企業価値経営へ 2001/08/30

G・ベネット・スチュワートⅢ.河田剛;長掛良助;須藤亜里訳.EVA創造の経営.東洋経済新報社.1998

これまた久しぶりにお仕事の話。経営ビジョン策定の推進役を勤めるようになってから早いもので約3ヶ月が経ちました。この間の洗脳活動が効を奏してか、小生の目指していたゴールに大分、近づいてきました。そのゴールとは企業価値経営であります。売上成長を目指すのでも、利益成長を目指すのですらない。本質的な付加価値の創造、最大化を目指す経営であります。

という訳で、付加価値の測り方から始まって、付加価値を高めるための方法、中でも業績と報酬の連動のさせ方、財務プランニングなどなどを解説した企業価値経営の代表的教科書The Quest for Valueの邦訳を読みました。詳しい内容についてはAMAZONに譲りますが、はっきり言って面白いですよ。多少、会計や財務の基礎知識が必要になるかもしれませんが、その努力を払ってでも読む価値があるのでは、と思います。


これまた久しぶりの一句 2001/08/31

何もせぬまま日暮れて虫時雨

久しぶり続きの締めくくり(?)は俳句です。夏になったら、あれもやろう、これもやろう、と、思っていたけど、何もできないうちに秋になっちゃったなぁ。今日も、もう日暮れ。虫たちが責め苛むように鳴く。まぁ、そんなメランコリックな句です。

でも、まだ、推敲中。「日暮れて」と「虫時雨」がつき過ぎてる感じがします。虫が鳴くのは日暮れてからに決まっていて、言葉がだぶり、スリムじゃない感じがするのです。そこで、別案:

本日も何もせぬまま虫時雨

とは言え、こちらも、どうも気に入らないのです。川柳っぽい滑稽さが先に立って、ブルーな感じが出ていない気がするのです。で、もう1つの別案:
何もせぬまま今日も虫時雨

字足らずなんだよねぇ。しかも何となく端正さに欠ける気がする。まぁ、それも、だらぁっとした夏の夕方っぽくていいのかなぁ。

という訳で、今しばらく悩ませて頂きます。小生は俳句をきちんと勉強したことがないので、ご意見ご助言なんぞ頂けると助かっちゃいます。


フレディがやってきた!―創作メモ― 2001/08/31

フレディが歌ったこと
フレディに誓ったこと

今も
いつも
いつまでも

遠くのほうで花火が光って
苦しそうに光って消えて
もとの闇に立ち尽くす

わたしと
あなたと
わたしたちの嘘と

さよなら、フレディ
もう大丈夫
誰も測りに来ないから
わたしも、もう泣かないから


めったにないことですが、ふと詩になりそうな言葉が浮かんでくることがあります。昨日の仕事帰り、深夜、駅から自宅へ向かう道を辿っていたとき、唐突に「フレディ」がやってきたのです。

「フレディ」が誰なのか、どんな人物なのか、具体的なイメージがまったく湧かないうちに、言葉は勝手に進んでいきました。歌うフレディ、フレディへの誓い、花火、嘘、そしてフレディの死。

これで完結してしまっているようにも思えるのですが、これでは未だ詩になっていない。フレディが動き出してくれるのを気長に待つとします。でも死んじゃったフレディは動いてくれるのかしらん?


アメリカもそんなもんっすか、はぁ 2001/09/06

Collingwood H.The Earnings Game:Everyone Plays Nobody Wins.Harvard Business Review.June 2001

企業価値価値経営という考え方には
  • 株式市場は十分に効率的であって、

  • 市場は全体としてみれば経済合理的に企業の価値を評価する。従って、

  • 株価は1株あたりの企業価値と高い相関を持ち、

  • 企業価値を高めれば株主の投資収益も高まる

といった前提があります。この前提は、数々の長期的な株価動向の調査研究により実証されていると言われていますが、本当なのでしょうか。

今回読んだ論文はこの前提に疑問を感じさせるものでした。企業価値経営の本家アメリカでも、本質的な企業価値を表していない会計上の利益、それも超短期的な四半期毎の利益が株価を大きく変動させるとされています。そのため米企業は様々な策を弄して、会計上の利益を証券アナリストの予想額に一致させようとしているのだそうです。例えば、利益が足らなそうな時には、卸に押込み販売するとか、会計上の処理を上手く操作して数字だけは予想値に合せるとか。それどころか、もっと利益が出せるはずなのに、売れば儲かるはずの有価証券を売らずに利益を抑えることさえあるのだそうです。どっかの国のどっかの企業とおんなじですね。

また米国では、証券アナリストの評価も、四半期毎の利益予想があたったか、はずれたか、で決まるのだそうです。このためアナリストは本質的な企業価値を評価を疎かにし、投資家も――プロである機関投資家すら!、アナリストやマスメディアに踊らされて、四半期毎の利益を見て、売り買いしちゃうのだそうです。はぁ。

この論文の著者は、こうした企業の利益管理が当の企業にとっても、アナリストや投資家にとっても有害であるとしています。企業が足元の利益を目安に事業を進めれば、その価値を高めることに失敗し、更には価値を損ねることさえある。その結果、アナリストや投資家が企業の足元の利益だけで評価や投資判断を行えば、長期的には大きな誤りを犯すことになり易い。みんな、しっかりしなさいな。著者の嘆きの声が聞こえてきそうな一文でした。


こんなのも読んではみたが... 2001/09/05

日本経済新聞社編.ベーシック株式入門.日経文庫.日本経済新聞社.1990

株式市場がどのような原理の下、どのようなメカニズムで株価を形成するのか、この辺りを知りたいと思い、また、これまで余りにも株式投資について無知であったことを反省して、取敢えず入門書に手を伸ばしてみました。

これから株式投資を始める人を対象にかかれた本だったので、ちょっと、こちらの求めていた内容とは違う部分が多かったのですが、それなりに面白かったです。というか、何ごとも面白がっちゃえば面白く思えてくるものなのかもしれません。


企業価値経営を成功させるには 2001/09/06

Haspeslagh P.C,Noda T,Boulos F.Managing for Value:It's Not Just About the Numbers.Harvard Business Review.July-August 2001

企業価値経営(value based management VBM)さえ導入すれば会社は良い方向に動き出す。価値指標を定めて、この指標に報酬を連動させさえすれば、社員は皆、価値創造を目指すようになる――。当然、世の中、そんなに甘いもんではありません。では、どうすれば効果が出るのか、企業価値経営の導入に成功する企業としない企業との間にはどのような差があるのか。著者は北米、欧州、アジアの約2000社に及ぶ大企業を対象に調査を行い、企業価値経営の成功要因は以下の5つだとしています。

  • トップが社外に対して価値の向上を約束すること
  • 広範な階層の社員に対して十分な研修を行うこと
  • 多くの社員を株主化すること(ヴァーチャルに、実際に)
  • 事業部門に権限を委譲すること
  • 業務プロセスの大幅な改革を行うこと
また業務改革のポイントとして以下の4つが挙げられています。
  • 価値指標とその計算のための会計を複雑にしないこと
  • 価値創造要因(value driver)を明確にし、価値創造のために何をしたら良いかが、誰にでも理解できるようにすること
  • 予算策定と戦略策定を統合すること
  • 情報システムを充実させること
では企業価値経営にはどのような効果が期待できるのでしょうか。同じ調査の結果から著者は、成功した企業には3つの効果が現れているとしています。
  • 事業構成(business portfolio)の改革
  • 本社企画部門と各事業部門との関係改善
  • 最前線の社員の意識と行動の変革
3つの効果のうち小生が特に興味を持ったのが2つめです。企業価値経営がうまく導入されれば、事業部門への権限委譲が進んで、本社企画部門が個別案件に首を突っ込まずに済むようになる。本社企画部門は全社戦略に集中できるし、また事業部門の戦略スタッフとの建設的なコミュニケーションが促進される。一方、各事業部門のマネジャーは戦略の立案と遂行に集中できるようになる。細かなことまで逐一、本社の許可を求める必要はなくなり、その為に費やしていた膨大な時間を本来の仕事に振り向けられる。著者はそのように語っています。

よいなぁ。実にうらやましいです。でも、これ以上書くとグチ入ってしまいそうなので、今日はここまで。


元ネタも読みました 2001/09/13

Boulos F,Haspeslagh P.C,Noda T.Getting the Value Out of Value-Based Management.Harvard Business School Publishing.2001

先週ご紹介した論文の元になった調査レポートを読みました。対象約2000社とありましたが、実際の回答数は300社足らずでした。レポートの内容はそれなりに面白かったですが、論文の方が参考になるかな。それでもいくつか興味を引いた箇所がありました。
  • 企業価値経営は「公式」に導入しなくても効果がないわけではない。しかし効果は限定的で、「公式」に導入した方が、幅広い問題の解決にはつながる可能性が高い

  • 北米・英国は株主価値創造を使命と考える企業が多く、アジア(といっても殆どが日本企業のようです)は全てのステークホルダー(利害関係者)にバランスよく責任を果たすことを大切とする企業が多い。欧州はその中間

  • 企業価値経営を行っている企業の5割弱がEVAを、約4割がRONA(=Return on Net Asset)を、2割強がCFROI(Cash Flow Return on Investment)を価値指標にしている(重複使用あり)


ステークホルダーの信頼を高めるには 2001/09/17

フレデリック・F・ライクヘルド.ロイヤルティ・リーダシップ.ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス.2001年10月号

小生は企業のミッション(=使命)には大きく分ければ2つの要素があると考えています。1つは株主や顧客、従業員を始めとした各ステークホルダー(=利害関係者)に対する責任。もう1つは企業独自の信念、すなわち存在意義や価値観を追求することです。今回はその前者の方に関わる論文のご紹介です。

この論文の著者によると、長い目で見れば、企業の収益性は、各ステークホルダーからどれだけ信頼を勝ち得ているかにかかっているのだそうです。そして信頼を得る鍵は経営トップの誠実さであると。なんだか、至極、当たり前な話ですが、えてして当たり前なことほど難しかったりしますね。

ステークホルダーとの間に上手く信頼関係を構築している企業を分析すると6つ共通点、原則があると、著者は言います。

  • トップが実践目標を公言すること

  • win-winの関係を構築すること

  • 意識的に相手を選ぶこと

  • 戦略、組織、全てをシンプルにすること

  • 正しく評価し、正しく報いること

  • 熱心に聞き、素直に話すこと

これまた当たり前っぽいのですが、それだけに説得力ありませんか?

そろそろ経営ビジョンの浸透策を考え始めなければならない段階に至っていますが、最高の浸透策はトップ自身がビジョンに対して誠実であることと、小生は思っています。日々の言動から始まって、社員の評価、報酬、戦略的な意思決定に至るまで、あらゆる場面でトップが率先垂範を貫くいていかないと、ビジョンなんて、すぐに神棚行きですよね。

ところで垂範で思い出しましたが、昨日、庭で飯盒炊飯してみました。意外にきちんと炊けるものですね。病みつきになりそうですって、全然、関係ない話でした。


こりゃあ、まいりましたねぇ 2001/09/18

仕事の関係である資料を読んでおりましたら、死期を目前にした老人へのインタビュー調査の結果というのがありました。「あなたは若い人にどんなアドバイスをしますか」という質問に対する回答です。

1位 “Be happy now”(今を幸せに)
2位 “Friends and family are important”(友人と家族は大切に)
3位 “Go for it”(やりたいことをやれ)

う~む。自分はどれもできていないなぁ。まいりました。

|

« 初月忌 | トップページ | 薬王院へ行く »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/30439/41214458

この記事へのトラックバック一覧です: 矮猫亭・2001年7~9月:

« 初月忌 | トップページ | 薬王院へ行く »