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2008.09.05

矮猫亭・2004年1~3月

古い日記の再掲載も早いもので16回目。とうとう最後の年、2004年に突入した。今回も含めて残り4回で終わらせる予定だ。

さて、この年の最初の3ヶ月も相変わらず頻繁に映画を見ている。正月映画の『ミシェル・ヴァイヨン』に始まって007シリーズの『ロシアより愛をこめて』までの合計9作品。なんと月に3本のペースである。今ではとても考えられないことだ。いったい何がボクを映画に向かわせていたのだろう……。


あけましておめでとうございます 2004/01/05

やや遅まきながら,新春のご挨拶です.本年も変わらぬお付合いのほど宜しくお願い致します.

さて,関東地方のお正月は穏やかな日が続き過ごしやすかったですね.私は年始休暇の間,毎日,家族とどこかしらに出かけていました.元旦は近所の神社に初参りをして,妻の実家で新年会.2日は恒例の七福神めぐり.今年は深川に行きました.3日は映画「ミシェル・ヴァイヨン」を見ました.さすがリュック・ベンソン.楽しませてもらいました.★★★★☆です.で,昨日は川越の成田山別院に本厄明けのお礼参り.それから久しぶりにボーリングをしました.その間,詩の方は,すっかりお留守になってしまいましたが,今日からまたガンバリます.

皆さまのご健康とご多幸をお祈りしつつ.では,また.


2003年を振返る(読書篇) 2004/01/07

実は未だ2003年の回顧が終わっていませんでした.という訳で本日は第二弾,読書篇.昨年読んだ本は34冊でした.約半数が文学系(詩集,小説,評論,等)でその他はビジネス書と子育てものが多かったです.特に印象に残った5冊を挙げてみます.

銀河鉄道の夜(宮沢賢治)

言わずと知れた名作.何度読んでも飽きさせません.

モオツァルト・無常という事(小林秀雄)
物事の本質をズバリと突いた鋭いフレーズが満載.

おくのほそ道(松尾芭蕉)
いつか,この人の漂泊の跡を辿る旅をしてみたい.

粕谷栄市詩集(現代詩文庫)
日本語による散文詩の最良の書き手だと思います.日ごろ詩を読まない人でも面白く読めるのでは.

世界中年会議(四元康祐)
いま私が最も注目している詩人の一人です.詩が取りこぼしがちな題材をユニークな切り口で捉え平易な語り口ながら,しっかり詩になっています.

次点

記憶のつくり方(長田弘)
上野千鶴子が文学を社会学する
伝統の創造力(辻井喬)

余りに文学系に偏ってしまいましたので1冊だけビジネス書を挙げておきたいと思います.

ビジネスプロセスモデリング(戸田保一・飯島淳一 編)

BPR系の仕事は余り担当したことがなかったためプロセスの記述やモデリングについてはこれまで勉強したことがありませんでした.必要に迫られてツケヤキバ的に読んだものですが参考になっただけでなく,なかなか面白かったです.

今年はどんな本と出会えるのでしょうか.もっと多くもっと深く読みこんでゆきたいと思います.


2003年を振返る(句作篇) 2004/01/09

本日は2003年に詠んだ俳句を振返ります.総数13句,季節ごとに並べると以下の通りです.

冬の句

流感や早退けの背に陽のそそぐ

春の句

いじめ子もいじめられ子も雛の前
咲き初むる花を脇目に屋形船
春の虹新入社員のシャツ白し
つつましう暮らしてこそや菫草
熱癒えて庭に咲き出ずハルジオン

夏の句

葉桜や仰ぎつ過ぐる乳母車
五月闇点滴瓶のほの明かし
病室にも黄金週間野球帽
初燕天衣無縫という語あり
しまい湯や黴の香ほのか我が家かな
黴の宿鴉多きを訝しむ
通学路黄傘を連ねたどたどし

お気づきの通り年明けから梅雨のころまでの句しかありません.これは昨年は前半は句作に後半は詩作に力を入れたためですが実は秋の句が苦手ということもあります.

今年も今のところは詩作中心と考えていますので俳句はお留守になりそう.う~む.なんとか両立できれば良いのですが.まぁ,少なくとも勉強だけは続けてゆきたいと思っています.


2003年を振返る(詩作篇) 2004/01/14

2003年に発表した作品は僅かに2編,「迷途」「冬納め」だけでした.これは寡作な私としても余りにも少ない.前半は句作に専念したとはいえ少なすぎです.もちろん多ければよいというわけではありませんがいまは数多く試すことが大事と考えていますので大いに反省すべきです.反省します.今年はもっと頑張ります.

ところで,この2作品は共に散文詩です.これまでは行分け詩を中心に創作を行ってきた私としては異例なことです.散文詩の試みは今年も続けるつもり.もしかすると野球選手のフォーム改造のようなものなのかもしれません.

最後に2作品を再掲しますが長くなりますので別メッセージにさせて頂きます.お楽しみ頂けると嬉しいです.


2003年を振返る(詩作篇,「迷途」再掲) 2004/01/14

     迷途

いつからだろう。男はいつも間違った場所にいた。間違った道を間違った方向に間違った歩き方で歩いていた。だから思いもかけない三叉路に出くわし、驚かされることもしょっちゅうだった。そんなとき男は必ず自分の考えとは逆の方に進んでしまう。まれには思った通りに足を運べることもあったが、それはそれで、そもそも間違った道を選んでしまっていた。もうどこにも出口はなかった。

ある朝、男は珍しく車で出かけた。これもまた別の誤りの始まりであった。いつもの間違いが加速を重ね、あっというまに見知らぬ土地へと男を連れ去った。男は途方にくれた。どこにでもあるような、これといった特徴もない住宅街をのろのろとさまよった。ちょうど下校の時刻なのだろう。ランドセルをしょった子どもたちが怪訝そうにこちらを見ている。その視線に気をとられた瞬間、仔猫が車の前を横切った。

男はとっさにブレーキを踏もうとした。だが、その判断が本当に正しいのか、ひどく疑わしく思われた。男は躊躇した。迷った。仔猫の姿が消えた。仔猫の身体は軽過ぎて、微かな衝撃さえ残さない。ミラーの中で二、三度大きく跳ね、それきり動かなくなった。車道を渡り終えていた母猫が仔猫のもとに戻ってきた。しばらく我が子の耳や背を舐めていたが、一向に目覚める気配もなく、とうとう諦めて去って行った。

男は車を止め、ハンドルに顔を伏せた。通りすぎる子どもたちの冷たい視線。何台かの車が反対車線を抜き去って行った。あれから何時間たったのだろう。フロントガラスの向こうから赤い光が差し込んできた。ふと顔を上げると、いつまでもまっすぐな道の果てに太陽が低くぶら下がっている。男はエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。どこまでも西へ。日の沈む場所へ。そこが出口でなくても構わない。

そのころ子どもたちは、母親に耳を引っ張られたり、背中を叩かれたりしながら、布団にしがみついていた。朝が来るのはいつも早すぎる。死んだ仔猫の夢が未だ頭の中でざらついていた。


2003年を振返る(詩作篇,「冬納め」再掲) 2004/01/14

     冬納め、あるいは虐殺の予兆に関する記録

 冬納めの儀式は古来より西院にて執り行うものとされている。その間、本尊は伏せられ、黒いラシャ布が被せられる。これを本尊隠しと称する。永年、雪守家の末子の役目とされてきたが、鴉葬以来、毎年、隠し役を選ぶことが村主の最も重要な仕事となった。隠し役の要件は年によって異なる。十八年前には碧陰核をと泉告げが下り、村主は自分の娘に植碧するほか術がなかった。
 本尊が隠されると納女が招き入れられる。泉のほとりの荒小屋に棲む老女。齢い二百を超えると噂される。平素は疎んじられ声をかける者さえいないが、泉告げを聞くのも冬を納めるのも、この女にしかできない。著しい水勢のために真冬も凍らぬ泉。女は小さな杯に泉水を汲み、ひとしずくもこぼさぬよう、まる一日かけて、ゆっくりと山道を下ってきたのだ。物音もたてずに御堂に入る。闇戸が閉ざされる。この鉄の扉は儀式が終わるまで決して開かれることはない。
 隠し役と納女だけが残された御堂の中でどのような儀式が行われるのか。村には一人として知る者はいない。儀式が終わり闇戸が開かれると、女は口を閉ざしたまま山道を戻ってゆく。本尊は元の位置に、隠し役はラシャ布に包まれて目覚めることのない眠りを眠る。死んだわけではない。中には眠ったまま三十年、生き続けた者もあったと聞く。あとはただ空の杯が残されるだけだ。
 長い沈黙の後、ようやく扉が開かれ納女が現れた。この冬は納められんかった。村人はみな初めて女の声を聞いた。突然西の空が明るみ、火箭が闇空を渡る。錆びくさい飢えと渇きを口元に凍てつかせ、見えない獣たちが満ちてゆく。冬眠は解かれた。いや禁じられたのだ。噴出の姿のままに泉は凍り、火箭に裂かれた風が鋭く氷面を渡る。村主の目に殺意が顕れる。速やかに伝播し納女を取り囲む。


2003年を振返る(パブリケーション活動) 2004/01/19

昨年を総括してみると創作活動は比較的低調だったと言わざるを得ません.一方,パブリケーション活動の方は結構活発だったと思います.

1.矮猫亭雑誌の廃刊と矮猫亭出版局の開設

矮猫亭雑誌を始めたのは5年前.参考書片手にシクハクしながらwindowsのメモ帳で書いていました.主な舞台を当サイトに移してからもズルズルと続けていましたが思い切って廃刊とし,その役割の一部を矮猫亭出版局に移しました.

2.作品年報「二〇〇二年のことばしごと」と詩集「迷途のみやげに」の発表

いずれもPDF版を矮猫亭出版局に発表したネット出版です.今年もこのやり方で個人誌を創刊したいと思っております.

3.現代詩フォーラムへの投稿

詩作品9篇とエッセイ(?)1篇,俳句35句を投稿しました.投稿作品は以下の通りです.尚,カッコ内は現代詩フォーラムの投稿先カテゴリーです.
 冬のシュプレヒコールに(自由詩)
 取引き(自由詩)
 やがて角の生える日(自由詩)
 あいさつ(自由詩)
 あかあかと(自由詩)
 風の砂丘(自由詩)
 落首(未詩)
 迷途(自由詩)
 冬納め、あるいは虐殺の予兆に関する記録(自由詩)
 夢は枯れ野に(批評・散文・エッセイ)
 矮猫亭句帖抄 春の部,夏の部/秋の部冬の部(俳句)

4.C-Direct-2Uへの投稿

以下の4作品を投稿,掲載して頂きました.
 冬のシュプレヒコールに
 取引き
 やがて角の生える日
 あいさつ
CD2Uは編集者のコメントが楽しいです.2002年以前の掲載分も含め投稿者別バックナンバーでご覧頂くことができます.

今年は紙の印刷物の形でも作品を発表したいと思っています.


久しぶりに映画の話 2004/01/23

去年の話はそろそろ飽きたので久しぶりに映画の話をしましょう.今年に入ってから映画を3本見ました.

■ミシェル・ヴァイヨン (2003/仏/監督:クーヴレール)

車好きの息子に連れられて久しぶりに映画館に足を運びました.映画館に行ったのは,かれこれ2年ぶり.もう,それだけで嬉しくて嬉しくて.映画の方も,あれこれ小難しいことは抜きの痛快娯楽作.こういうのも結構好きです.★★★☆☆.

■踊る大捜査線 The Movie (1998/日/監督:本広克行)

本広監督の作品を観たのは,これで2本目.1本目は「スペーストラベラーズ」でした.想像していたよりもはるかに良い出来でもっと早く観ておけばと悔やまれました.ちょっと辛目の★★★☆☆です

■エロス+虐殺 (1970/日/監督:吉田喜重)

深いなぁ.深い.前衛的な作品で難解と評されることが多いようですが映像の美しさが際立っているので十分観られます.モノクロってこんなにきれいなんだって,思わせられますよ.それにしても最後の問いの深く重いこと!ちょっと甘めの★★★★☆です.

もう1つあった! 2004/01/23

もう1つ肝心な映画を忘れていました.

■帰らざる河 (1954/米/監督:プレミンジャー)

誰がなんと言ったってモンローの映画です.モンロー抜きには成り立たなかったと思う.また,この映画のモンローは際立って魅力的です.★★★★☆のうち1つはまるまるモンローに捧げます.


新発見!? 2004/01/26

鏡に向かいます.にらめっこの要領で変な顔をします.どうですか,ひどく可笑しくないですか?他のヒトが同じような顔をしたらどうか,想像してみます.それほど可笑しくないと思いませんか?

少なくとも私にとっては,可笑しさの度合いが格段に違う.そんなことに気づいたのです.これは,どういうことによるのでしょうか?ヒトは他者イメージよりも自己イメージのほうが硬直的なのではないか.だから,ちょっとでも,そこからずれると,ひどく奇妙に思えるのではないか.そんなことを考えました.

私にとっては大発見ですが,どう思いますか?


読書録より ――『遠野物語』 2004/01/28

『遠野物語』を読みました.言わずと知れた,日本民俗学の始祖,柳田国男の名作です.これを読んで改めて確信を深めましたがやはり「物語」という行為は,人間にとって,とても本質的なものなのですね.喜び,悲しみ,怒り,笑い,家族愛,自然への畏怖,権力への反発,欲望,憎悪,等々ここに納められた数々の民話には人間の様々な心の動きがイキイキと描かれています.こうした心の動きを,ストーリーという何か別のものの動きに変換し,「物語」ることで(意味の動き?,イメージの動き?,言葉の?……)自分の心を,人の心を動かし,世界に新しい意味を与える.「物語」とは,そういった行為だと思うのです.こうした「物語」の力,「ストーリー」の力を詩に取戻すことそのために散文詩という方法を自分なりに確立したいと考えています.


久々の新作「速度」 2004/01/30

ストーカー(?)の詩がようやく完成致しました.楽しんで頂けると嬉しいです.尚,散文詩ですので段落以外の改行をしておりません.画面を読みやすい幅に調整してご覧下さい.

     速度

その女はいつの間にか現れて、いつも私の前を足早に歩いてゆく。私はその速度に魅せられる。彼女を追わずにはいられないのだ。

しかし追跡は十五分も続けばましなほうだ。信号機や人混みが邪魔をする。女の汗の匂いにさえ私はついに届かない。

その日も私は女を見失った。諦めて地下鉄に乗りこむ。ガラス窓に思い浮かぶ女の後姿。その向う側にコンクリートの壁が続く。

モーターの唸り。レールの継ぎ目を踏む車輪の音。くぐもった響きの隙間から聞きなれた女の足音が軽やかに降り始める。

鉄路の西の果て、見なれた工業団地に降り立つ。足音は未だやまない。信号を渡っても、工場の門をくぐっても、足音はついて来る。それとも私が追っているのか。見えない女を。

薄暗い事務棟の廊下に速さが充満してゆく。私と女は際限のない追跡を無言で共謀する。そして逃走する。やまない雨の中へ。


旅にはドラマがつきものですね 2004/02/02

久しぶりの出張,ただいま新幹線の中です.といっても2泊3日,熱海で研修,なので気楽なものです.

さて,先週末に見た映画についてご紹介したいと思います.例によって録画したものですが,立て続けに2本見ました.

■おかしな二人2

往年の名作『おかしな二人』の後日譚.ジャック・レモンとウォルター・マッソーの名コンビが17年ぶりの再会とドタバタ珍道中を演じています.老いてなお軽快な二人のかけ合いが絶妙です.もちろん心温まるシーンも用意されていてコメディはこうでなくっちゃ.ちょっと辛目の★★★☆☆.

子供の頃にテレビで『アパートの鍵貸します』を見てからずっとジャック・レモンが好きでした.もう彼の新作は見られないのだと思うと,とても寂しいです.

■鉄塔武蔵野線

夏休み.送電線の鉄塔を追う少年の冒険.余り冒険には似つかわしくない内省的な少年が思いがけない意志の強さを発揮するところがナントモ良い.ちょうど同じ年頃の息子を持つ父親としてはたまりません.寡黙な印象の映画ですが,静かな感動に心を浸されます.これはオススメです.自信を持って★★★★☆.

奇しくも旅の車中から,旅の映画を2本ご紹介することになりました.私のちいさな旅には何が待っているのでしょう?

と書いたところで持ち時間が切れ,今は熱海の研修会場.研修と懇親会を終えて,自室に戻りましたがPHSカードがつながらずおまけに部屋にはLANはおろか,電話もなくすっごく久しぶりに,銀の公衆電話からアップします.ほんと旅にはドラマがつきものでして…….


近況報告? 2004/02/12

日乗の投稿も少ないし,最近,仕事しすぎで,詩がお留守になってんじゃないの?といった声が聞こえてきそうな今日この頃ですが実は珍しく,結構,勉強していたりします.どうも最近の現代詩はつまらない.だから詩に物語を取戻すために散文詩に取組もう.というのが,ここのところ私のテーマです.そのためのレッスンとして,大塚英志の『キャラクター小説の作り方』を勉強しています.これはモノ書きたらんとする人にはお奨めですよ.別にキャラクター小説を書こうとする人だけではなくそれどころか,詩やエッセィ等々,小説以外のものを書こうとしている人にも.あとは超短編(microstories)について調べたりしています.このカテゴリーは面白い.なんだか可能性を感じるのです.


『キャラクター小説の作り方』はお薦め 2004/02/13

『キャラクター小説の作り方』を読み終えました.これは,ほんと,お薦めです.小説を書こうという人には,具体的な書き方やトレーニング法のレッスンが役に立ちそう.書くけど,そんなレッスンいらねぇや,というかたや書くわけじゃないけど文学に関心あり,のかたでも少なくとも以下の部分は,興味深くお読み頂けるはずです.

 第5講 キャラクターは「壊れ易い人間」であり得るか
 第11講 君たちは「戦争」をどう書くべきなのか
 最終講 近代文学とはキャラクター小説であった

タイトルや平易な語り口にだまされちゃいけません.実は,かなり,熱く,深い本です.


『アイ・アム・サム』を見ました 2004/02/16

遅ればせながら2001年のアメリカ映画,『アイ・アム・サム』を見ました.ショーン・ペンもミシェル・ファイファーも子役のダコタ・ファニングも実に芝居達者.脚本も演出も悪くない.でも,私には何かが物足りなかった.なんだろう.どうも,よく判らないのですが,激しく感じ入ることもなかったししんみり,じんわり伝わってくるものも感じられなかったのです.う~む.わからん.とにかく★★★☆☆です.


クラッシュ&リバース 2004/02/20

去年の9月のこと,創作ノートから以下を公開致しました.ご記憶でしょうか?

 誰もが知っているはずのことだが、この道は何処にも行き着かない。勝利や栄光、ましてや富などといった虚妄に憑かれ、迷いこんできた者たちには生憎なことだが、ここは純粋に不毛な場所なのだ。
 そのことを知り尽くした者だけが、誰よりも深くアクセルを踏み込むことが出来る。誰よりも微妙に、そして大胆にブレーキを扱い、誰よりも素早くクラッチを繋ぐ。ハンドルを切る。誰よりも鋭く。
 だが観客が熱狂するのも、実はその速さではない。虚無に酔うのだ。青い炭素繊維に包まれた虚無が、どこにも行き着かない道を疾走してゆく。その音、匂い、触れることの出来ない手触り。虚無のあらゆる属性に官能を覚えるのだ。
 どれほど激しいクラッシュも、死でさえも、はじめから失われているものを奪うことは出来ない。だからレーサーたちは不安に襲われることも、孤独に苛まれることもなく、走り続けられるのだ。

こいつを徹底的に書き直してみようと思いまして参考のため,太田哲也さんの「クラッシュ」「リバース」を読みました.レース中の事故で瀕死の重傷を負いながら,苦闘の末3年後に再びフェラーリでサーキットを走るまでの復活の記録です.2冊合せて原稿用紙千枚ほどでしょうか,一気に読んでしまいました.内容もさることながら,一気に読ませるだけの「力」のある文章です.レースに興味のない方にも是非お奨めです.

この文章に拮抗し得る「力」を,自分の詩にも持たせたいと思います.


課題意識 2004/02/24

以前,大岡信がこんなことを書いていました.

プロの詩人かアマチュアかは金を稼いでいるかどうかの違いではなく詩の歴史と現状を踏まえて,詩にとっての課題を考えそれを意識しながら実作しているかどうかだ.

実は全くウロ覚えで,大岡の言葉だったかどうかさえ定かではないのですが…….

そんなことを思い出したのは,『現代詩手帖』の2月号で吉本隆明の「詩学叙説」・「詩学叙説・続」を読んだからです.明治時代に西洋の詩と出合った日本人が,いかに,その成果を導入しようとしたかいかに,その成果を踏まえて日本の詩を改革しようとしたか吉本は,彼らの課題意識と,その取組み,ならびに帰結とを明瞭に語っています.

そういう意味でも,私は素人だなぁ,とつくづく思います.(もちろん稼いでいないという意味でも)しかし,いま取組んでいること,詩に物語を取り戻すというのはこうした課題意識の萌芽なのかもしれません.


現代詩新潮流 2004/02/26

『現代詩手帖』2月号の特集は「現代詩新潮流」.詩集未刊行の人も含め,若手詩人の作品を多数掲載しています.「生の間近さの中で」と題した対談記事も,最近の若い詩人を知る上では非常に便利です.かつ,彼らが,どのような課題に立ち向かっているのか(立ち向かうべきか)といった課題意識についても明らかにしており奥が深いです.その上,吉本の「詩学叙説」正・続が読めるのですから,2月号は,かなりお得かも.

次号の発売が2日後(かな? 結構,遅れるんですよねぇ)に迫っていますので買う気のかたは急いだ方が良いかも.もちろんバックナンバ取寄せもできますが


サナギを育てる 2004/03/04

レーサーの話.徹底的に書き直そうと考えています.今は未だサナギを育てているところ.どんな虫がはいだすやら,お楽しみに.

ところでサナギといえば映画『コクーン』(=サナギ)を見ました.85年のアメリカ映画.いわゆるSFです.老人と宇宙人という取り合わせが新鮮.なかなか情感にあふれていてよかったです.★★★★☆です.


創作ノートから 2004/03/10

ふと思いついた詩句や,書きかけの作品に関する覚書などをノートに書いています.ここのところ,ノートのご紹介を怠っていましたので,まとめてご覧頂こうと思います.

黒いかばんの中に咲く幼女の顔。

ふと,そんな光景が目に浮かびました.今のところ,その先に発展してゆく気配なし.
男はコートのポケットの中でこぶしを握り小さくガッツポーズを作った。立て続けに五回。よし、よし、と胸のうちで歓声を上げながら。そして暗がりに立ち止まり夜空を見上げた。星の多い夜だった。手のひらには爪の形に血がにじんでいた。

こちらも思いつきですが,ちょっと動いています.乞うご期待.
速さの感覚は墜落の感覚と結びついている。誰よりも速く走るとは誰よりも激しく墜落するということだ。どこにも行き着かない道を疾走することは底なしの急激な墜落なのだ。速さが官能的なのは墜落が官能的だからだ。墜落を予感するときのあの足のすくみ。そこには幾ばくかの快楽がはらまれている。その官能性をタナトスと名づけるのは簡単なことだ。だが、それでは何も語ったことにはならない。

いま取組んでいるレーサーの詩に関する覚書き.速さの感覚,あの陶酔感の原点は墜落にあるという発見が,この詩の重要なモチーフになっています.


よしもと初体験 2004/03/11 13:16

先日,生まれて初めて「よしもと」を見にいきました.といっても,本場大阪ではなく,新宿ルミネです.出演者は

サカイスト,ラフコントロール,シャンプーハット,インパルス,品川庄司,陣内智則,Bコース,井上マー

それから若手と思わしき芸人による新喜劇(長編コント?)がありました.

なんと言っても面白かったのはインパルスと陣内智則.妙に素人っぽい井上マーも良かったです.というのも彼らの芸には批評精神が感じられたからです.インパルスのコントは圧倒的な軍事力を身勝手にふるう米国への批判が顕著でした.井上マーの漫談(?)はディズニーランドに代表される米国文化のウソ臭ささを鋭く突いていました.新喜劇も同じくディズニーランドに突っ込みをいれていたのが興味深い.これは偶然だったのでしょうか? それとも意図的?いずれにせよ,若者たちの間には「ディズニーランド」と米国への疑問,反発が広がっているように思われました.

陣内智則の一人コントも秀逸でした.自分で吹き込んだであろうテープの音声を相手の一人芝居.個々人の精神がタコ壺化しディスコミュニケーションが蔓延している状況を描くには非常に有効な方法論だと感じられました.

残念だったのは,これら3組以外の出しものには知的障害者に代表される弱者を揶揄するようなネタが少なくなかったこと.そして,そんな公開イジメまがいの芸が依然としてウケていたことです.大人なんだから,あそこでブーイングを入れれば良かった,と反省しています.


ホワイトデーはライブで 2004/03/15

うちの近くにアドリブという小さなライブハウス(?)があります.引越してきたときから知ってはいたのですがいつでも行けると思うと,ついつい足を運ばずじまいでした.そのアドリブがライブをやめてレストランになってしまう,と聞き,昨日,行ってきました.元ふきのとうの山木康世さんのソロ(弾語り)をメインに山木さん率いるトリオ「三日坊主」も登場しアットホームながら,にぎやかな,楽しいライブでした.若い頃,ふきのとうを聞いていたという妻にはよいホワイトデープレゼントに,なったかな.


007危機一髪 2004/03/16

久しぶりに007を見ました.ドクター・ノーに続く第2作『ロシアより愛をこめて』です.やっぱり良いですねぇ.何が良いって,ショーン・コネリーが「男」っぽくてかっこいい.その他の英国スパイたちも,ライバルの悪役さえもが実に「男」らしい「男」っぷり.

で,思ったのが,これが007の本質だとしたら興行的には苦しくなってきてんじゃないかなぁ,ということ.上野千鶴子他の対談本で『男流文学論』というのがありますがその表現をお借りすれば,007はまさに「男流」映画だと思うのです.そして,「ふるきよき時代」の「男流」映画が,女たちにはモチロンのこと男たちにもアピールしない時代になってしまっているように思われるのです.これでは007の存続は危ういのでは?それとも既に違う路線を走り始めているのでしょうか?(最近の007はちっとも見ていないのですよねぇ)

試しにキネマ旬報のデータベースで『ロシアより愛をこめて』を検索してみたらありゃりゃ,ヒットしない.あれって思って,あれこれ調べてみると初めて日本で公開されたときは『007危機一発』というタイトルだったのですね.なんちゅう芸のないタイトル,しかも誤字だし(本当は危機一髪ですよね).


創作ノートから / 「同盟」 2004/03/18

     同盟

 寒い夜のことだ。

 男はコートのポケットの中でこぶしを握りガッツポーズを作った。小さく、しかし強く。自分だけの、ささやかな勝利を確認しているかのようだった。手のひらに四つの爪跡ができた。うっすらと血がにじんでいた。

 見上げると薄赤い三日月が冷えきった夜空に浮かんでいる。五つ目の爪跡のように。

 男は満足げに歩き出した.ひと気のない夜道を.


どうにかここまでは来ましたがこのようなアプローチを続けてもこの先には行けそうにありません.ちょっと違う切り口,違う次元に持ち込んでみたいと思っています.


夢の西瓜,西瓜の夢 2004/03/23

久しぶりに夢を見ました.なかなか奇妙な夢です.

私はどこかのシンポジウムか学会で発表を聞いている.発表の内容は夢の西瓜を開発したというものだ.発表者によると,西瓜に含まれている芳香成分は収穫後,急速に分解して別の物質に変化する.しかも,この分解物が生臭く,西瓜の鮮度低下の原因となっている.発表者は,この芳香成分に似た別の物質に目をつけた.それは,比較的分解速度が遅く,しかも分解物にも同様の芳香がある.長期にわたる遺伝子組み替え実験の結果発表者は遂にこの新しい成分を持つ西瓜の開発に成功した.夢の西瓜.しかし,その果肉は赤くない.うっすらと黄味がかった白.発表者はクリーム西瓜かバニラ西瓜と名づけるつもりだそうだが私には,どうにも,おいしそうには見えなかった.


創作ノートから 2004/03/25

最近の創作ノートから.

もしも私たちが、もっと正確に自由の意味を理解していたら。

イラク,パレスチナ,スペイン,台湾,日本,アメリカ…….ニュース映像を見ていたら,ふと,そんなことを思いました.ただの詠嘆に過ぎませんが,ここから詩を立ち上げてゆくことができたら,と思います.
夜空に爪跡を残しただけの(微かに血の滲んだ)俺たちのささやかな勝利

「月」は暗喩の中にその姿を消し「勝利」はひどく空虚なものに変質してしまいました.私はここからどこへ進んでいったらよいのだろう.


いよいよ始まる! 2004/03/30

何が?って,JGTC,全日本GT選手権です.春はモータースポーツの各カテゴリーが開幕する季節.日本では21日にスーパー耐久,27日にはF3.先週末にはフォーミュラ日本が始まりました.そして,いよいよ今週末,JGTCが始まるのです.

今シーズンの見どころを私なりに挙げると先ずは,GTRに替わってGT500に参戦するZ.次いで,そのZを駆る本山哲が連覇を実現できるか.そいでもってターボで強化されたNSXの加速力と4.5リッタにサイズダウンしたスープラのコーナリング.初参戦のフェラーリ・マラネロも目が離せません.


創作ノート 2004/03/31

雨の音を聞きながら湯舟につかっていると,自分がこんなにも空っぽだったことに改めて気づかされる。空っぽな自分に水が流れ込んでくる。満ちてくる。なんの抵抗もなく。

どうも詠嘆調だなぁ.どうしたんだろう.最近,溜息をつくことが多い気がする.やれやれ.ふー.あれ,まただ

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新宿って、いろいろ物騒なところもあるけど、なんか好きです! [続きを読む]

受信: 2008.09.08 17:00

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