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2009.01.27

あら玉の年のはじめの七くさを

1月7日。妻が夕食に七草粥を炊いてくれた。例年のこととはいえ時候に合った季節感のある食べ物を頂けるのは嬉しい。照れくさくて面と向かってはなかなか言えないことだが、妻に感謝である。

さて七草といえば会社帰りに読んでいた正岡子規『墨汁一滴』(岩波文庫)に七草にちなんだ短歌があった。

あら玉の年のはじめの七くさを籠に植ゑて来し病めるわがため

『墨汁一滴』は子規の晩年の随筆で、病床から見た身の回りの事物や幼少の或いは若き日の思い出、俳論・歌論といった文学論、更には社会批評やショートショート風の小品まで、幅広い内容となっている。弟子をはじめとした見舞い客との交流もしばしば取り上げられていて、外出はおろか庭に出ることも病床を離れることさえできなくなった子規を慰めようと、みな様々な工夫を凝らしていた様子が伺える。たとえば墨井恕堂が当時まだ珍しかった蓄音機を持ち込み海外の音楽を聞かせたり、寒川鼠骨がブリキ缶に本物の御籤を入れて持ってきて子規に引かせたり、といった具合だ。子規も見舞い客の好意に応え、蓄音機から流れる曲におどけた歌詞をつけてみたり、ブリキ缶から引いた凶のくじの詩句が分からないと1ヶ月も考え込んだりする。

子規は短歌や俳句の近代化を目指し、自ら作品や評論を残す一方、伊藤左千夫長塚節斎藤茂吉高浜虚子河東碧梧桐、といった数々の弟子を育てた。『墨汁一滴』に示された心温まる交流からは名伯楽・子規の指導力を支えたであろう人徳・人柄が伺えるように思われる。

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